ステップファミリーをもっと知りたい知ってもらいたい
明治学院大学社会学部教授
野沢 慎司 先生
SAJが発足し、その活動が次第にマスメディアなどに紹介されるようになったことによって、少しずつステップファミリーが社会に認知されるようになってきました。しかし、それでも現代の日本社会においては、ステップファミリーについての情報も知識もまだまだ限られています。SAJが採用した「ステップファミリー」という言葉も、日本語のなかに充分に溶け込んだとは言えません。ステップファミリーは、社会的に見えにくい存在であり続け、その手に必要な情報や支援が届きにくい状況が続いています。
ステップファミリーが見えにくい存在であることは、家族研究の世界でも同様です。日本では、これまでステップファミリーの研究が大きく立ち後れていました。家族研究者の間でも、ステップファミリーがどのような家族であるかということは、最近までほとんど問題にされませんでした。言い換えれば、ステップファミリーに対して有効な支援やサービスを提供するための基盤となる知識や情報自体が存在しなかったのだから、家族を支援する立場にある様々な専門職や専門機関がそれを提供できなかったとしても不思議はありません。したがって、ステップファミリーについての調査研究が進むことは、社会のなかのステップファミリーをより見えやすい存在にし、様々な制度からの情報や支援を得やすい社会環境を作り出すという意味でも重要なことです。
「家族」というものは、社会環境の変化とともに、そのかたちも内実も変化するのがつねです。ひとつひとつのステップファミリーが経験する具体的な家族関係のパターンを理解するとともに、それが社会の大きな制度や仕組みとどのように関連しているかを視野に入れながら、共同研究者たちとともにステップファミリーの調査研究を進めています。その成果を社会に還元し、またステップファミリー研究の先進国・アメリカ合衆国など外国の研究成果を紹介することなどで、SAJおよび多くのステップファミリーのお役に立てればと願っています。
※肩書きは2001年投稿当時のものです