まちがった思いこみ

 新しくステップファミリーとなった家族は、程度の差こそあれ、誰もが新しい結婚生活に対して期待を持ちます。今回こそは完璧な家族を持ち、完璧なパートナーとなり、完璧な親になろうと考えることも稀ではありません。しかし、これらの期待の中には、ステップファミリーの一員として生きていく中で、現実的とは言えないものがあることも事実なのです。

 どのような期待が現実的ではなく、ステップファミリーに対する思い込みや誤解に過ぎないかを知ることは、大変重要です。なぜなら、非現実的な期待を持っていると、自分の家族が、ステップファミリーとして普通に起こるような問題に行き当たったときにも、必要以上に失望してしまうことがありえるからです。

 次に書かれた内容に、あなたは「その通りだ」と思うでしょうか。それとも「そうは思わない」でしょうか。

Q1

一緒に暮らせば家族になれる

 再婚する時、人は希望に溢れています。しかし、結婚すれば普通の家族になれると期待するとがっかりするかもしれません。ステップファミリーは、違った経験や習慣を持った大人と子どもが家族になる非常に複雑な家族です。想像し期待したような家族とは異なることをまず受け入れ、その上でお互いに分かり合い、前向きな関係を築き、家族の歴史を作り上げるには、短くても4 年以上かかります。

Q2

初婚の家族と同じような親子関係 ・ 家族関係をめざすべきだ

 再婚家庭は親子関係があるところに新しいパートナーとの関係が築かれるなど、初婚家庭とは構造的に大きく異なります。にもかかわらず、初婚家庭を目指してしまうと、子どもやパートナーのニーズを見落としかねません。自分の家族にとって最も良いと思う親子関係・家族関係とはどういうものかを考え、その実現を目指しましょう。

Q3

継子をすぐに愛することができる。子どもも、継親を親として認めるはずだ

 人間関係を作るには時間がかかるものです。ある程度の年齢の子どもであれば親の再婚に複雑な感情を抱いているかもしれません。継親子が実の親子のようになるべきだという過大な期待は、家族に不満や罪悪感を与えかねません。継親子が実の親子を目指すのではなく、互いに思いやりと敬意を持てる関係を目指すことも選択肢の一つです。

Q4

親の離婚・再婚を経験した子どもたちは、その後の人生でもずっと心理的な傷から回復できない

 子どもは親の離婚/再婚後、新しい環境に戸惑い悩む時期があります。そうした子どもに対し、親は罪悪感を覚え埋め合わせをしようと、つい甘くなりがちです。しかし、時間はかかってもほとんど の子どもは心の安定を取り戻します。5~10 年後には、多くの子どもが初婚家庭の子どもとほとんど変わらないことが研究で分かっています。

Q5

「 意地悪な継母」というおとぎ話にみられる悪いイメージは、現代のステップファミリーには何ら影響を与えていない

 おとぎ話に登場する継母は意地悪に描かれているので、私達は知らないうちに継母は意地悪だと思 い込んでいます。継母に対するこの偏見のせいで、継母は自分が意地悪な継母になっていないか、他人からどう見られるか、どうしつけに関わるかに悩まされます。研究では、継母が家族の中で最も難しい役割だということがわかっています。

Q6

離れて暮らすもうひとりの親に会わせないほうが、子どものためによい

 親が離婚しようとも、子どもに二人の実親がいることは変わりありません。面会交流は親にとっては難しいことかもしれませんが、それは逆に、子どもが新しい環境に順応し、心の健康を保つために大変重要だということが分かっており、多くの国で行われています。日本では、離婚後の単独親権制度のために、離れて暮らす実親を排除する傾向がありますが、子どものために関係を継続できるよう工夫しましょう。

Q7

離別よりも死別のステップファミリーの方が楽である

 親が再婚すると、子どもは亡き親が忘れ去られてしまうことを恐れたり、裏切りだと感じたりして継親は歓迎されないことが多いのです。また継親は、パートナーや継子の思い出の中で美化された故人と比べられてしまったり、故人の持ち物や写真、法事などを負担に感じることもあります。故人を偲びつつ、新たな家族の歴史を作ることを大切にしましょう。

Q8

何を差し置いても継子を優先するべきだ

 継子の立場は家族の状況変化にさらされ、様々な喪失経験への配慮が必要です。しかし、「不憫な子ども」扱いすることは子どもの心の健康に悪影響を及ぼします。家族内の「だれか」を優先するのではなく、どの立場においてもそれぞれのニーズを家族で慮ることが大切です。

Q9

継子が面会交流に来たときだけの継親役は、 同居の継親よりも楽である

 基本的に人間関係は一対一の時に深まります。時々会うだけの間柄はその分、お互いを知り合う時間が同居に比べ少ないため、関係の深まらない様子に焦ることもあるでしょう。同居であっても別居であっても、それぞれに関係形成の工夫や配慮が必要です。

Q10

再婚前から子どもと同居している親は、一貫して親でありつづけるので、ステップファミリーになっても子どもに対して特に気をつけることはない

 親の離婚や再婚にあたり、子どもは常に関与できない立場で過ごしています。その上に一番近く長く過ごした実親との親密な時間が目減りしていることに、実親は気づかないことがあります。パートナーの姓への変更や、パートナーの呼び名を強制したりしていないでしょうか。実親は良かれと思っていても、子どもは抵抗できないだけかもしれません。子どもにとって一番辛いことは、継親との関わり方というより、実親が自分の気持ちを理解してくれていない状況です。

こうした非現実的な思い込みを知り、パートナーや家族に語りかける際、あるいは悩む人に接する場合に、適切な状況の判断と言葉の選択がはかれるようにしましょう。