SAA設立者
ヴィッシャー夫妻
あなたは、私たちがなぜ、どのようにして「全米ステップファミリー協会 Stepfamily Association of America (通称SAA)」を設立・運営し始めたかと訊ねられましたね。そのご質問に答えるためには、私たちが結婚していた20年前に戻る必要があります。その頃、私たちふたりは、それ以前の結婚から4人ずつの子供を連れて再婚したのですが、自分たちの新しい家族がどのようになっていくのか、私たち自身、予想もつかない状態でした。今でこそ、アメリカではステップファミリーが直面 するであろう問題が理解され、また、それらにいかに対処すれば良いかのサポートとなる記事が掲載されている本や雑誌が多く出回っています。でも、私たちが結婚した1960年代には、その手の情報は皆無でした。
我々の子どもたちは、5才から15才までと年齢差も大きく、再婚当初は、多くの予期せぬ チャレンジが待ち受けていました。通常の結婚の場合、ふたりの大人がお互いの関係を深め合うことから始まります。しかし、子どもを伴った再婚は、それ以上の人間関係を一つの家族に迎え入れることとなるのです。当然家族関係は、より複雑となり、新しい家族のひとりひとりが、お互いを知り、居心地の良く暮らせるようになるまでには、単にふたりの関係より長い時間を必要とします。私たちは新しい家族において本当にたくさんのことを学ばなければなりませんでした。
この間、アメリカ社会における家族事情は大きく変化していきました。離婚率が上昇した結果 、再婚家庭も増え、多くのステップファミリーを生み出しました。私たちは、他のステップファミリーの人たちと交流を始め、彼らが日常でぶつかる困難とは何かを聞いたりもしました。また、彼らに役に立つことは何かを考え始めました。そして、すぐにわかったことは、同じような境遇にいる他の家族との交流と情報を得ることが大切だということでした。私たちとカリフォルニアにいたもう一組のステップファミリーが一緒になって、ステップファミリー事情に興味を持つ人たちのためのミーティングを始めました。そして、ゆっくりとですが、いくつかの家族がカリフォルニア州内の異なる町や市でミーティングを持つようになりました。ステップファミリーに生活する大人と子どもたちが解決してゆかなければならない状況を、相談を受けているカウンセラーたちに理解してもらうための本も書きました。この本は、カウンセラーや福祉に携わる人達だけでなく、多くのステップファミリーの人たちにも読まれました。その後、次第にアメリカ中に この活動が知られるようになり、全国的な組織を作ることを決めました。そして、1979年12月1日にSAAが誕生したのです!
SAAは、いろいろな市や町で小さなグループがミーティングを開き、お互いをサポートできるように援助してきました。そして毎年1回、100人から200人の人がアメリカ中から集う全米ステップファミリー会議を催しています。ステップファミリーの親や子どものための本が色々書かれるようになり、SAAがこれらの本が販売される中心的な場所となりました。(SAAは、過去もそして現在も資金が充分ではありません。そんなこともあり、SAAは、本の著者に働きかけ、彼らの本の何冊かを寄付してもらい、それらをSAAを通 して売って資金を作ることもしました。)そのような過程を経て、教育資源のプログラムをスタートさせたのです。何年もかけて、サポートとなる本が何冊も出版されるに従ってSAAプログラムも充実してきました。今では、ひとつのステップファミリーが話をするために他のステップファミリーを捜すこともできるようになり、また、教育資源プログラムを通 して価値ある情報を得ることもできます。SAAは今でも国内外のグループの設立をサポートたり、メディアとの連絡の相談にのったり、ステップファミリーの生活に関する重要な情報をステップファミリーに提供したりしています。また、全米会議に出席できないステップファミリーのために、SAAは年に2回、アメリカ合衆国の各地で行われる役員会議の際に、セラピストやカウンセラーのための研修プログラムを提供しています。
当初よりSAAには事務や指導にあたってくれる情熱的かつ献身的なボランティアのグループが存在します。彼らは普段より電話で連絡を取り合い、春と秋にはSAAの実行委員長と事務管理者とミーティングを開き、組織の運営や経営、そして将来の計画などについて討論を重ねて来ました。このような傑出したサポーターのグループが存在していることは、SAAにとってとても幸運なことでした。このボランティアグループによる委員会の運営方針がなければ、SAAは、ステップファミリーが、社会に貢献し、かつ社会の重要な一員として受け入れられるためのサポートができなかったでしょう。
あなたの手紙の中に、日本のステップファミリーに向けて、何かメッセージが欲しいともありましたね。私たちは喜んで、それをさせてもらいます。また、日本のステップファミリーに情報を提供することが大きく成功することを祈っています。私たちは自分の体験から、そして子供を持ちながら再婚した家族と出会い、彼らの失敗と成功を分かち合うことによって、多くのことを学んで来ました。
日本の皆さんへのメッセージとして、私たちが重要だと考えている7つの提案を皆さんと分かち合いたいと思います。
1. 通常の家族と同様に、ステップファミリーであっても、うまくやっている家庭やうまくやっていない家庭は存在します。また、ステップファミリーのカップルの多くが、他のステップファミリーをサポートするためには、情報と教育が大変重要な要素だと言っています。
2. 子どもを伴った再婚家庭の生活は、通常の結婚と比較して、より多くの人々が関与することになることから、関係がより複雑になり、家族が一段落するまでにもより多くの時間が必要となります。子どもが小さいとその時間は短くなりますが、それでも2?3年はかかることがあります。
多くのステップファミリーが、「最初の2年間はとても混乱しイライラすることが多い」と言います。忍耐を持ちましょう。常に家族のことばかりを考えているようにならないように、何か楽しむことを見つけましょう。そして、家族のひとりひとりに、変化と新しいバランスが生まれ、すべてが落ち着くまで、それぞれのペース、個人の時間を大切にしましょう。
3. 新しい家族のひとりひとりが新しい関係を作るまでには、時間と努力、それに加えて、面白いことや楽しいことを一緒に過ごしたという新たな歴史が必要です。共に楽しい一時を過ごした経験を持つまで、大人にも子どもにも、お互いを思いやる等ということを期待するのはやめましょう。
4. 人間関係は、二人きりでいる時により早く進展し、また、その関係が重要なものとして継続します。親は自分の子ども(実子)たちだけと過ごす時間が必要ですし、パートナーの子どもたちそれぞれが楽しむことを見つけ、彼らと特別な時間を共有するように心がけることも大切です。もちろん、自分たちパートナー同士の関係も大切にすることを忘れてはなりません。
5. それぞれが異なる家庭の体験と物事の進め方を持ち寄ることになるので、以前にしたことや、新しい状況の中で何を感じているかなどを、みんなで一緒に話し合うことがお互いを知る上で更に助けとなります。「新しい家族の中でも、以前と同じように続けたいものは何か」、また、新しいルールなどをみんなで見つけます。例えば、家庭内での必要な決めごと(家事の役割分担、宿題、習い事、テレビの時間)、食事(食べ物の好み、買い物、食事の用意、後片付け)、レクリエーション(お出かけ旅行)、お祝いごと(休日、誕生日)などです。
物事をどう行うかを決めて、それぞれが何を求めているかを知ることが、この新しいグループの一員である実感を持たせる助けとなります。以前からのものでこれからも行いたいものは すべて続け、新しい家族の中での新しいやり方もスタートさせましょう。
6. 親は双方の子どものしつけについては緩やかに変化させていく必要があります。子どもがとても幼くない限り、義理の親は本当の親をサポートし、新しい親の役割をゆっくりと始めて行く必要があります。子どものニーズに二人で一緒に向かって行けるよう、パートナー同士も良い夫婦としての関係をしっかりと作る必要があります。通常の結婚であれば、子どもが出来る前に、夫婦はお互いを思いやり、二人の関係を確固たるものにする時間があったでしょう。ステップファミリーでは、最初から子どもが存在するため、これがより困難になります。そして、子どもが安心感を持てるようになるためには、パートナー同士がお互いを思いやり、ともに直面していくことが必要です。どちらにせよ、将来、子どもは巣立って行き、あとに残るのは、パートナー同士の関係だけなのですから。
7. ほとんどの子どもは両親が好きです。ですから、離婚後に、両親がけんかを続けて子どもにどちらの味方をするかを選ばせるような関係より、協力関係にある方がどれだけ大きな助けとなることでしょう。協力関係は、本人にとっても助けとなります。なぜなら、常に心配や怒りを感じていることは、それだけでも気持ちのよいものではないからです。
話をする相手を見つけてください。参考となる資料があれば読んで下さい。「どうせどんな家庭でも様々な問題を持っているんだから」、そう考えてリラックスしましょう。そして、ステップファミリーが新しい環境に落ち着き居心地の良い関係になるには、通常何年もかかることを思い出してください。
それだけの価値はあります。ステップファミリーの生活はそれだけ報いのあるものなのです!
Emily & John Visher
(翻訳:関野直行)
※肩書きは2001年投稿当時のものです